雪山に封じられた過去の事件と現在の陰謀が交錯する劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』――鑑賞前に全貌を整理しておきたい人必見!
長野県警の隻眼刑事・大和敢助の因縁、毛利小五郎が背負う未完の約束、天文台襲撃事件に潜む伏線など、鑑賞前に知っておくと映画が数倍おもしろくなる情報を厳選して紹介する。上映時間の中に散りばめられた細部のヒントを見逃さず、スクリーンのクライマックスを最大限に楽しむ準備を始めましょう。
【予習①】『名探偵コナン 隻眼の残像』のあらすじ
国民的人気アニメ「名探偵コナン」の劇場版第28作目です。毛利小五郎と長野県警の隻眼の警部・大和敢助がキーパーソンとなり、長野の雪山を舞台に過去と現在の事件が交錯する物語です。本作のキャッチコピーには「眠っていた記憶(じけん)が、目を覚ます―」「果たせなかった約束と、隻眼に宿った残像。氷雪吹き荒れる山岳で、白き闇の因縁の幕が切って落とされる―」とあり、雪山に秘められた因縁と“封じられた記憶”がテーマになっています。
過去パートでは、長野県・八ヶ岳連峰の未宝岳で大和敢助警部が雪山である男を追跡中に、男が放ったライフル弾が敢助の左眼をかすめ、その直後に発生した雪崩に巻き込まれて重傷を負います。この事故で敢助は左目を失明し、一連の事件は未解決のまま時間が経ちました。10か月後、長野の国立天文台野辺山で施設研究員が何者かに襲われる事件が発生し、敢助が現場捜査に駆けつけます。その最中、天文台の巨大パラボラアンテナが突然動き出すと、雪山で負傷した敢助の左目が激しく疼きだします。
同じ夜、東京の毛利探偵事務所に小五郎の警視庁時代の同僚だった刑事・鮫谷浩二(通称「ワニ」)から電話が入ります。ワニは未宝岳で起きた雪崩事故を調査中で、当時の事件ファイルに小五郎の名前を見つけたと言うのですが…。謎の「雪山遭難事故」と天文台襲撃事件、そして小五郎の過去が繋がり、物語はクライマックスへと進んでいきます。
【予習②】『名探偵コナン 隻眼の残像』の主要登場人物

- 江戸川コナン – 本作の主人公。天才的な推理力を持つ少年探偵ですが、その正体は身体が小さくなった高校生探偵・工藤新一です。いつも通り事件の裏で推理を進め、小五郎たち大人のサポート役として活躍します。持ち前の観察眼と発明品で危機を乗り越え、終盤では真相解明と犯人逮捕に貢献します。
- 毛利小五郎 – 熱血漢な毛利探偵。元警視庁刑事という経歴を持ち、普段はヘボ探偵としてコミカルな一面を見せますが、本作では20年ぶりに劇場版の中心人物となり、シリアスでクールな“大人の小五郎”が描かれます。昔の同僚ワニの登場や悲劇的な出来事もあり、いつになく真剣な態度で事件解決に挑みます。小五郎が涙を流すシーンは大きな見どころです。
- 大和敢助(やまと かんすけ) – 長野県警の警部。荒くれ者風の風貌で左眼に大きな傷があり、視力を失っています。雪山での捜査中に負った傷で隻眼となった過去を持ち、いわゆる“ハードボイルド”な刑事です。本作では10か月前の雪山事件で負った傷の影響で左目が疼くなど、過去の因縁に囚われながらも事件解決に奔走します。長野県警の仲間たちと協力し、雪山と現在の事件の真相究明に挑みます。
- 諸伏高明(もろふし たかあき) – 長野県警の警部で、敢助の同僚。頭脳明晰で「警部の参謀」とも呼ばれる切れ者。冷静沈着で洞察力が鋭く、敢助と共に雪山の事件と現在の事件の関連を探ります。長野県警勢では高明が論理的推理を担い、敢助を知恵でサポートする場面が見られます。
- 上原由衣(うえはら ゆい) – 長野県警の刑事で、敢助の部下にあたる女性警察官。敢助とは固い信頼で結ばれており、本作でも捜査の最前線で彼を支えます。必要に応じて危険な現場に飛び込み、男性陣にも引けを取らない活躍を見せます。
- 鮫谷浩二(さめたに こうじ) – 警視庁の警部で、小五郎の刑事時代の元同僚。小五郎には「ワニ」という愛称で呼ばれます。現在は警察庁で改革準備室に所属し、独自に長野の雪山遭難事故を調査していました。小五郎に連絡を入れて事件の核心に迫ろうとするキーパーソンで、その動向が物語に大きな影響を与えます。
- 大友 隆(おおとも たかし) – 長野の山奥で炭焼き小屋を営む男性。38歳。一見寡黙な山男。
- 円井まどか(つぶらい まどか) – 25歳の女性研究員で、国立天文台野辺山に勤務しています。物語冒頭、天文台に侵入した正体不明の人物に襲われる被害者で、間一髪のところを同僚の越智教授に救われます。
- 越智 豊(おち ゆたか) – 国立天文台野辺山の教授で、阿笠博士の大学時代の後輩でもあります。天文台見学に少年探偵団と阿笠博士を招待した張本人であり、偶然にも事件に居合わせました。温厚で博識な彼は天文台の設備や研究内容について警察に説明し、物語の専門的背景を補完する役割を果たします。
- 黒田兵衛(くろだ ひょうえ) – 警視庁捜査一課の管理官。白髪に右目の眼帯という特徴的な外見を持つベテラン警官で、かつて長野県警に在籍していた経歴があります。鋭い洞察力で捜査の方向性を示し、劇中では東京と長野の警察の橋渡し役となっています。
- 安室 透(あむろ とおる)/降谷零(ふるや れい) – 警察庁公安部の捜査官で、黒ずくめの組織に潜入している人物。シリーズ屈指の人気キャラクターであり、本作でもキレ者ぶりを発揮しますが、本作から声優が古谷徹氏から草尾毅氏に交代しており、その演技にも注目が集まりました(アニメ本編では2025年初頭に交代済)。
- 阿笠博士と少年探偵団 – 江戸川コナンの隣人で発明家の阿笠博士と、小学生トリオの歩美、元太、光彦も脇役として登場します。阿笠は旧知の越智教授の誘いで子どもたちを天文台見学に連れて行き、結果的に事件に巻き込まれます。物語に緊迫感が続く中、彼らの天真爛漫な言動が一時の和みやコミカルなシーンを提供しています。
【予習③】『名探偵コナン 隻眼の残像』の作者情報と作品背景
原作者・脚本家・監督のプロフィール
原作:青山剛昌(あおやま ごうしょう) – 漫画『名探偵コナン』の作者。1963年生まれ、鳥取県出身。1994年に『週刊少年サンデー』で「名探偵コナン」の連載を開始し、以降コミックスは100巻を超える大ヒットシリーズとなっています。少年探偵という王道にトリックやアクションを絡めた作風で世界的に人気を博し、テレビアニメ化(1996年〜)や毎年の劇場版公開につながる原点を築きました。劇場版にはアイデア提供や監修的な立場で関わることもあり、本作でもタイトルのヒントを自ら発信するなど作品作りに寄与しています。
脚本:櫻井武晴(さくらい たけはる) – 本作の脚本を手掛けるシナリオライター。『名探偵コナン』劇場版シリーズでは「絶海の探偵(2013年)」「ゼロの執行人(2018年)」「黒鉄の魚影(2023年)」など複数作品で脚本を担当しており、シリーズの緊迫感あるミステリー作りに貢献してきました。またテレビドラマ『相棒』シリーズや『科捜研の女』シリーズなど数多くの実写ミステリー作品も手がけており、緻密な伏線と渋い人間ドラマ描写に定評があります。本作でも警察官たちの群像劇と過去の因縁が絡むストーリーを巧みに構成し、大人も楽しめる本格ミステリーに仕上げています。
監督:重原克也(しげはら かつや) – アニメーター/演出家として活躍する本作の監督。これまで劇場版コナンの演出や絵コンテを務めてきた人物で、例えば「ゼロの執行人」や「黒鉄の魚影」でも演出スタッフとして参加していました。満を持して本作で劇場版監督デビューを果たし、迫力あるアクションシーンや雪山ならではの映像美をスクリーンに描き出しています。重原監督は細部まで作画にこだわる職人肌で、緊張感みなぎるシーン運びとキャラクターの表情描写にも注目です。シリーズ初参加の監督ではありませんが、自身が全面的に指揮を執るのは初めてであり、長年培った演出力を本作で存分に発揮しています。
作品の背景・制作エピソード
制作の経緯とテーマ設定:前作『100万ドルの五稜星』(2024年公開)の劇場上映終了後に流れた特報映像にて、すでに次回作は毛利小五郎・大和敢助・諸伏高明がキーパーソンになることが示唆されていました。
近年の劇場版コナンは安室透(ゼロの執行人)や赤井秀一(緋色の弾丸)、高木刑事&佐藤刑事(ハロウィンの花嫁)などレギュラー脇役にスポットを当てた作品が続き、いずれも大ヒットしています。制作サイドはファンに人気の警察学校組や警察キャラ路線の成功を受け、今回は原点回帰的に小五郎という古株キャラに再び焦点を当てることを決めたようです。
小五郎が劇場版で主要役となるのは『水平線上の陰謀』(2005年)以来約20年ぶりであり、「コナン」シリーズとしても新鮮味のある挑戦となりました。雪山×警察というハードボイルドな舞台設定や、「隻眼」「フラッシュバック」といったキーワードからもうかがえるように、大人の渋みと過去の因縁をテーマに据えたミステリーに仕上げる意図が感じられます。

公開時期とプロモーション:本作は2025年4月18日(金)に全国東宝系で公開されました。例年通り春の大型連休(ゴールデンウィーク)シーズンを狙った公開で、家族連れからコアなファンまで幅広い観客を動員しています。公開に先立ち、2024年12月4日にタイトルとティザービジュアルが解禁され、翌12月5日には特報映像とあらすじも公開されました。宣伝展開では原作者の青山剛昌自らNintendo Switchのゲーム『あつまれ どうぶつの森』内でタイトルのヒントを出すユニークな試みも話題になりました。さらに2025年2月末にはメインポスターと60秒予告編がお披露目され、直後には試写会を行わずファンミーティングで公開直前イベントを行う異例の方針も発表されました。これは前年の作品と同様、ネタバレ防止のための措置で、ファンとの交流を深める新しい試みとして注目されました。

話題になったポイント:2025年3月4日には山田孝之(俳優)と山下美月(元乃木坂46)が本作のゲスト声優を務めることが公式発表され、大きな話題を呼びました。山田は炭焼き職人・大友隆役で渋い演技を披露し、山下は天文台職員・円井まどか役で声優初挑戦とは思えない存在感を示しています。
また主題歌を人気バンドKing Gnuが担当し、新曲「TWILIGHT」を提供したことも音楽ファンの注目を集めています。主題歌は作品のエンディングを彩るだけでなく、予告編でも効果的に使われ、物語の余韻を深める役割を果たしました。
さらに、物語の重要人物である安室透の担当声優が長年務めた古谷徹氏から草尾毅氏へ交代した点もファンの間で話題です。交代直後の劇場版出演となり、「声は変わっても相変わらずカッコいい!」と好意的に受け止める声が多く聞かれました。
興行成績:公開直後から興行成績は絶好調で、初日だけで約69万人を動員し興収10.5億円を突破するシリーズ史上最高のスタートを切りました。これは前作対比109%という驚異的な数字で、翌日以降も勢いは衰えません。
公開初週末3日間(4/18〜4/20)で興行収入34.4億円・動員231万人を記録し、前作比102%とシリーズ新記録の好発進となっています。長野県とのタイアップ企画(聖地巡礼マップ配布や観光PR)も奏功し、GW期間中も家族連れや若者グループで劇場が賑わいました。結果、本作は歴代コナン映画の興行収入記録を更新する可能性が高いと報じられており、社会現象化した近年のコナン映画ブームをさらに加速させる一作となりました。
【予習④】『名探偵コナン 隻眼の残像』の考察ポイント

注目すべき伏線や演出
- 雪山事故の真相を示す伏線:物語冒頭の未宝岳での雪崩事故シーンは、本作全体の鍵となる出来事です。敢助の左眼をかすめた「ライフル弾」の正体が何だったのか?!
天文台のパラボラアンテナが動いた際に敢助の眼が疼く描写があります。敢助が目撃した機械の形状など、細かな描写が後半の真相解明につながる伏線になっています。 - “白き闇”の映像表現:サブタイトルにもある「隻眼の残像」は、敢助の片目に焼き付いた記憶の残像と、雪に閉ざされた“白い闇”=ブリザード状態のホワイトアウトを掛け合わせた表現です。監督の重原克也は雪山の極限状態をリアルかつ迫力満点に描写しており、吹雪で視界が真っ白になるシーンや、月明かりに照らされた雪原など印象的な映像美が随所に盛り込まれています。観賞時には、光と闇(白と黒)のコントラストが物語の心理状況や真相の明暗を象徴している点にも注目してください。
- 警察キャラ総出演の協力関係:本作は警察関係のキャラクターが多数登場するのも見どころです。長野県警(大和敢助・諸伏高明・上原由衣)と警視庁(黒田管理官・目暮警部・佐藤美和子・高木渉)、さらに公安(安室透・風見裕也)までオールスター的に警察勢が揃う贅沢な布陣となっています。普段接点の少ないこれらのキャラ同士のやり取りや連携プレーにファンは興奮させられるでしょう。各キャラの立場ゆえの発言(県警 vs. 警視庁の縄張り意識や、公安の極秘任務など)が細かく描かれているので、セリフの背景にある組織間関係にも目を向けると物語に厚みが増すでしょう。クロスオーバー的な共演は劇場版ならではの醍醐味であり、それぞれのファンにとって見逃せないポイントです。
- アクションと推理のバランス:劇場版コナンの魅力であるダイナミックなアクションも本作では健在です。雪山でのアクションは手に汗握る場面が連続します。一方で、推理劇としても見応えがあり、中盤以降はコナンや高明たちが丁寧に事実を積み上げて仮説を立て、謎を解いていくプロセスがしっかり描かれます。観客としてはアクションに興奮しつつも、提示される手掛かりを自分なりに整理して推理を巡らせる楽しみがあります。エンターテインメント性と論理的な謎解き要素のバランスが絶妙なので、派手なシーンでも気を抜かず細部を観察することで、より深く物語に入り込めるでしょう。
ストーリー・キャラクターの考察
- 過去と現在の因縁がもたらす悲劇:10か月前の雪山事故と現在の連続事件は密接にリンクしており、そこには複数の人々の思惑と感情が絡んでいます。過去の事件で救えなかった命や、報われなかった想いが現在の犯行動機に繋がっている点は、本作のストーリーをより立体的にしています。登場人物たちがそれぞれ背負った過去の因縁と向き合う姿は、単なる推理ゲーム以上の深みを作品にもたらしています。
「もしあの時こうしていれば…」という後悔や、「真実を明らかにして救われたい」という切なる願いが交錯するドラマとしても鑑賞すると、キャラクター一人ひとりの行動に込められた意味がより鮮明になるでしょう。過去と現在の因縁が生んだ悲劇をどう乗り越えるのか――その答えは劇中で提示されます。 - 科学技術と自然の脅威: 国立天文台の最先端設備が登場する一方で、自然そのものである雪崩の猛威が人間社会に影を落としています。現代的な科学技術(電波望遠鏡など)と、人智を超えた自然現象(雪崩)がせめぎ合う構図は、本作に独特のスリルを与えています。
- シリーズ内での位置付けと新風: 『隻眼の残像』は28作目でありながら、シリーズに新たな風を吹き込んでいます。小五郎という初期からのレギュラーにスポットを当てつつ、敢助や高明といった原作でも根強い人気を持つ脇役をクローズアップした点は、シリーズファンへのサービスであると同時に大胆なストーリーの掘り下げでもあります。
公開後の反響でも「大人向けの深みがあって良かった」「刑事メインも面白い」という声が上がっており、シリーズの多様性を示す一作と言えるでしょう。コナンや蘭といったメインキャラは控えめながらも、脇役たちの魅力が際立つことで結果的に作品全体の厚みが増している点も評価ポイントです。鑑賞後はぜひ他の劇場版作品と比較してみて、「隻眼の残像」で描かれた新しいコナン像とは何だったのか、この作品がシリーズにもたらした意味について考察を巡らせてみるのも一興です。
まとめ|『名探偵コナン 隻眼の残像』の予習ポイント
- 劇場版コナン第28作目である
- 舞台は長野県未宝岳の雪山と国立天文台野辺山である
- 毛利小五郎と長野県警の大和敢助が物語の軸を担う
- 封じられた記憶と過去‐現在の因縁が主要テーマ
- 10か月前の雪崩事故で敢助は左目を失い事件は未解決
- 天文台襲撃事件発生により雪山事故との関連が浮上する
- 小五郎の元同僚・鮫谷浩二がキーマンとして動く
- 諸伏高明と上原由衣ら長野県警が捜査の要である
- 安室透は草尾毅への声優交代後初の劇場版登場で話題
- 主題歌はKing Gnuの新曲「TWILIGHT」が担当する
- 脚本は櫻井武晴、監督は重原克也の劇場版初指揮作
- 小五郎が20年ぶりにシリアスな中心人物として描かれる
- アクションと推理が融合する
- 公開は2025年4月18日で初日興収10.5億円の最高スタートを記録
- 長野県とのタイアップで聖地巡礼マップ等のプロモを展開
- タイトルの「隻眼」は敢助の片目とホワイトアウトを象徴する